プロの教える就活証明写真撮影

基本的に日本の証明写真では、歯を見せて笑うことはないですよね。外務省によるパスポート申請用写真の規格でも、普段と顔が大きく変わるような笑顔はだめだと記載があります。

かといって、真顔の証明写真というのも問題があります。

暗い印象を与えたり、怒っているように見えたり、悲しそうに見えたり…

これから同じ企業・職場で働きたいという熱意を見せるには、質の高い証明写真で良い印象を与えたいものです。

では、印象の良い証明写真ってどういうものでしょうか?

これはどの業種に関してもいえることだと思いますが、いくら“できる人間”を表現したところで、自己中心的な能力の主張は必要ないですよね。明るく元気で協調性をみせつつ意志を感じられる、そんな雰囲気が一番ではないでしょうか?

“はっきりとした目元とにこやかな口元”といつも自分は表現しています。

 

そんな証明写真を手に入れるためのポイントについて考えてみましょう。

 

いろいろな要素がありますが、ここでは、スタジオ撮影で自分が気をつけているところを中心に書いていきたいと思います。ご自身で撮影される場合にも参考になる点がいくつかあるかと思います。

撮影中に注意してみているのは以下のポイント。

 

本来はヘア・メイクから考えていくべきですが、問題になる要素が多いので、一番最後に述べさせていただきます。

 

まずはじめに衣装。新卒のリクルートスーツの場合、それほど種類はないですし、第2ボタンから上くらいの写真になるので、ポイントとなるのは男性に関してはネクタイの色・形、女性に関しては襟の形です。

男性の場合はネクタイの色・締め方でしょう。就活用で多いのがブルー系ですね。正面の撮影の場合は特にネクタイが曲がって見えたり、よれていないことを確認しましょう。

女性の場合はブラウスの形、襟を出すか、ボタンの開け閉めによって、印象をかえることができます。
一般的に第一ボタンをとめ、襟をしまって撮影するとまじめで硬いイメージになります。また、第一ボタンははずして襟を出し撮影すると、明るく活発なイメージになります。

最近は襟を出すことのほうが多いのですが、固めの業種に応募する場合は、襟は出さずボタンも留める方が無難かもしれません。

ただ、マイナスの意味で“おとなしそう”に見える方は明るい方向へもっていくのもアリですよね。

自分がどのような印象を与えたいのか考えておくことが必要です。

 

服装のパターンが決まれば、撮影の前に少し撮影の背景・照明について考えてみたいと思います。もちろん、一種類しかなければどうにも出来ませんが、変えられるのであれば、ですね。

いずれにしても背景色は基本的に単色です。個人的にはブルー系の背景がおすすめです。ブルー背景は日本人の黄身がかった肌を綺麗に見せてくれますし、さわやかで元気な印象を与えます。白やグレー背景だと肌色の調整に気を使う必要があります。

 

次は照明。正直なところ、照明が決まっていれば写真は誰が撮っても同じです。本格的なスタジオでしたら、それぞれの方に合わせた照明を選択しますが、証明写真専門のスタジオでしたら選択肢はないかもしれません。可能であれば、顔に陰の出ないタイプのサンプルを使っている写真館がおすすめです。最近だとボックスの照明写真撮影機でも下から補助光が当たるタイプがありますよね。最低でも下からのレフ板を使ってもらう必要があります。透明感のある若々しく健康的な肌の質感になりますから。上から1灯だけだと、目の下のクマが強調されますし、左右から2灯だと、顔が大きく膨張します。瞳の中に写るライトのあかりをみるとどんな光が当たってるか判断できます。

ただ、照明の数が多いとそれにあわせたメイクのテクニックも必要になりますので、ご留意を。

 

それでは、衣装と背景・ライトが決まればいよいよ撮影です。

とにかく良く指示をするのが姿勢。姿勢が悪いと間違いなく暗い印象になります。これは第2ボタンから上の写真でもわかるくらいです。極端なくらい胸をはった方が写真写りの良いことがほとんどです。撮影時には常に、肩を“後ろへ、そこから下へ”とお願いしています。

また、左右の肩の高さ、首の傾き、顔の向きも正面のつもりが意外と違うことがあります。

カメラマンの指示に従って微調整する必要があります。

 

上の写真はテストショット中の普段の自然な体勢と指示を出しながらご自信で補正してもらったもの

 

実は写真を見てご自身の姿勢が悪いと感じられる方がほとんどなんですよ。

 

そして、表情。

目元ははっきり、口元はにっこり。

言うほど簡単ではないんですが、目元を印象付けたいなら、ほんの少しだけ目を見開くような感じです。とはいえ、眉は上げずに、瞼だけにほんの少し力を入れる感じ。

さらにその目の状態で、口角を少し上げます。

本来笑うと目は細まるもの。それを意図的にコントロールするんですから、人によっては難しいようです。

撮影前に、鏡を見ながら練習しておくのも良いかもしれませんね。

意外とわらってないってこともあるので、必ずモニターでチェックさせてもらいましょう。

 

 

 

それでは、最後にヘアメイクについて考えていきたいと思います。

 

ヘアメイクに関して、

 

メイクアップといえば、モデルさんの華やかなイメージなどを思い浮かべる方もいらっしゃると思いますが、証明写真で一番気をつけなくてはいけないことは清潔感を与えること、証明写真はミスコンではありませんから。

顔のバランスを整え、いかに印象良くしていくかに尽きると思います。
時に個性も必要とはなりますが、ひとまずあっていただくことを前提とする場合、無難であることもひとつの選択肢ですよね。また、普段気にしている悩みもできれば解消したいところ。

 

顔にとって理想的な形は卵型だといわれています。卵のように顔の目元の辺りの幅が一番広く、そこからあごに向かって緩やかに小さくなっていく。正面から撮影する証明写真では顔の輪郭を補正する手段は限られるのですが、それでも方法はあります。

 

それでは、まずはヘアスタイル。

 

 

 

選択肢も色々ありますね。

ご自信の髪の長さ、求めるイメージによって考えてください。

 

前髪もながしたり、下ろしたりと色々なパターンがあります。流すほうが一般的と思われているようですが、個人的には適度な長さであればあえて流したりする必要はないと思っています。短い髪をあえてながすと、就活のための“無理してる感”が出るからです。

また、ショートヘアでは顔回りも隠すよりは耳が見えるように、ロングではフェースラインのヘアも含め、すっきり後ろに持っていったほうが良いですよね。

ここでは、アップにする場合の整え方について説明していきたいと思います。

あまり良い例がなく申し訳ありません。真ん中がスタンダードで、前後がゆがませたもの。頭の形が歪んでいると顔の輪郭まで歪んで見えることもあります。あご周りの輪郭が左右で違う方は特に注意が必要です。一般的に頭の形が大きくなると小顔にみえますし、形が小さくなると顔が大きく見えます。

例えば、面長な方の場合、耳の上あたりをひっつめると、面長が強調されることがあります。そのあたりは少しボリュームを出すように、また、面長だからといって頭頂部のボリュームを落としすぎると、証明写真では顔を大きく見せる結果になることもあります。

一度には説明しきれないくらいのパターンがあるのですが、かならず最適な形というものがあるはずです。ただまとめれば良いというわけではないことだけはご理解ください。

 

それでは、メイクアップについて。

就活のメイクで一番のポイントは清潔感。

自分らしさを持ちつつ、極力マイナスの印象を与えないようにすること。

普段からしっかりとメイクされる方は、それも個性ですので、あえてナチュラルにする必要はありませんが、強い色味は避けた方がよいでしょう。

また、あまりにもヘアやメイクに無頓着なのも問題がありますよね。真面目な印象は与えるとはおもいますが、社会への適合性に関して疑われる可能性もあります。少しずつで良いので興味を持つことをおすすめします。

そして、スタジオ撮影における証明写真に関しては、照明によって肌を綺麗に見せる反面、メイク自体をうすく見せることがあります。照明にあわせたメイクを適切にすることで、コンプレックスをなくし、より自信のあふれる表情へ導くことも可能になります。

眉やアイラインははっきりと濃いめに、チークも一点に集中しないように少し濃いめ。リップも適度な艶があった方が健康的に見えます。

 

大切なのは写真に写った状態での見栄えを確認させてもらうこと。スタジオ撮影では気になることは写真を確認した時点ではっきりと話し合ったほうが良いです。

 

就活用の証明写真に限らず、理想の顔に近づけるためのメイクアップテクニックは色々あるのですが、経験を積めば積むほど書き尽くせないほどになってしまいました。自分の経験をシステム的にまとめたいとは思っているのですが、直接会ってメイクしてみないと、というのが現状です。就活用としては本人が気にいることよりも他人・採用担当者からみて不快感のないものにする必要がありますので、こちらの経験は役立ちます。ただ、普段のメイクに関してはこちらがどんなに良いと思って提案しても、ご本人が気に入らなければなんともできませんからね。“絶対こうしたほうが良いですよ”って言うメイクさんがいたら、ちょっと冷静になる必要があるかも。正解は決して一つではありません。

 

 

 

 

ここでは、ひとまず証明写真用のメイクについて一般的なことを書いていきたいと思います。

 

 

肌づくり
肌が荒れている=不摂生 というイメージはゼロではないですよね。
肌に関してはきれいにみえれば見えるほど良いといっても良いかもしれないです。もちろん嘘をつく必要はありませんが、メイクのテクニックでカバーできることがあればしていきましょう。


本当に大切な要素です。
眉の形は表情を決める最大の要素といっても良いかもしれませんね。顔のパーツのバランスをとって、顔の形すら変えて見せることもできます。
最近のトレンドはナチュラル。個性の演出で色々な形がありますが、証明写真で変に出過ぎることはマイナスにもなりかねません。まずは自分の顔にとってどの描き方がベストなのか知ることが大切でしょう。
そこから少し角度をあげると強そうな印象に、角度を下げるとやわらかい印象になります。普段強く見られる方は少しやわらかく、逆におとなしすぎる印象のかたは少し強めに描く(写真右)のも良いですよね。

最近は下がり眉ではかなげな印象を強調することもありますが、就活にはあまり向きません。
ほんの少しでも良いので、スタンダードな方向(写真左参考:眉山がすこしあがっているほうが意思の主張にもなります)へもっていきましょう。

アイメイク
大抵の方のリクエストは目元をはっきり・大きくです。もちろん、はっきりとした印象は、特に写真では必要ですが、強すぎるアイメイクは派手な印象を与えて、逆にマイナスになることもあります。まつげはしっかりと上げた方がよいですが、マスカラはつけすぎず、自然に長さ・ボリュームを与えるよう心がけましょう。

アイラインは目の形を整えるため必要ですが、写真で印象アップを狙うなら、黒などの暗い色の方が効果的です。またラインを描いたとはっきりとみせるよりは少しぼかしを入れて、アイライン自体の主張が強くなりすぎないようにしましょう。

 

アイシャドウの色に関しては、目立つものはNGですよね。全体的には色はベージュ系のパールを中心に使い、ツヤを与えて清潔感を演出。引き締めたい部分にはマットなアイシャドウを使います。パールは艶となりますので、どんなに濃い色でも大きく見せるという点では不向きです。また、大きなラメは写真ではホコリのようにうつりますので、ご注意を。

チーク

写真で一番うすくとんでしまうのはチークかもしれないです。特に肌をカバーしてしっかりと下地を作った場合は顔色が悪く見えないようにチークは少し強めに入れた方が良いです。もちろん入れすぎには注意。また、8割方ピンクよりですね。色の白い方にオレンジ系のチークは個性的になるので、良い・悪いの評価が分かれると思います。

リップ

リップも特に主張する必要はないですが、自然な唇の色に合わせて見るのが良いです。個人的にはベージュピンクをよく使います。唇も荒れて見えるのはよくないので、グロス等で適度なツヤをあたえるのも良いですね。

あとは少しだけ目元に力を入れて、瞼を持ち上げるようなイメージで、口角をあげて、少しにこやかに。やりすぎると作り笑いになるので、目元口元の力加減は微妙な変化を加えながら何枚か撮影してもらうと微妙な表情の違いから最高の一枚がみつかるでしょう。なんども言いますが、とった写真を見て少しでも不安があれば口にしたほうが良いですよ。その時に上から押さえつけられるようなコメントがあった場合は、要注意です。また、その場しのぎの持ち上げにも注意しましょう。

 

アトリエ マキーユ でした。